「北風」と「太陽」
「北風」と「太陽」の話に例えると
良寛さんは「太陽」の人。
問題を争うことなく解決する
人間はそういう存在なのだ、と
言い続けていたのではないか。
越後国(今の新潟県)で生まれた良寛さんというお坊さんがいました
生涯貧しい暮らしをしていましたが、その言葉は常に
人を力づけ、温かく明るい気持ちにするものでした
だから、多くの人に慕われています
そんななか、良寛さんを妬んでいた人がいました。
村一番嫌われ者だった渡し船の船頭で、大酒飲みの乱暴者。
船頭は「いつの日か良寛が自分の船に一人で乗ってきたら
突き落としてやろう」と考えていました。
幸か不幸か、その日はすぐにやってきました。
そして川の半ばまで船を出し、ゆらゆら揺らして良寛さんを
船から落としてしまいます
良寛さんは泳げません。だから溺れかけて死にそうになる。
船頭も殺すつもりはありませんから「もうこれくらいにしてやるか」
と良寛さんを引っ張り上げる。
すると良寛さんはこういいました。
「あなたは命の恩人だ。助けてくださってありがとう。
このご恩は一生忘れません」
良寛さんだって船頭が船を揺らしていたのはわかっていたでしょう
村の評判だって聞いていたはず。
なのに、彼は助けてもらったお礼の言葉しか口にしませんでした
そして、船頭は真人間になることを決意しました
「太陽」のように争うことなく問題を解決する
それが良寛さんの「実践」でした。
著者不明