メモ、書きとめのすすめ
自分に起こった貴重な省察はできるだけ早く
書きとめておくべきである
これは当然な心がけである
われわれは自分の体験でさえ時に忘れてしまうのであるから
まして自分が思考したことはどれだけ忘れるかわからない
それに思想というのはわれわれの望みどおりのときに
やってくるものではなく、気まぐれのときに
去来するものであろう。
物を考えたり、創り出したりするひとはもちろんのこと
日常生活でも決して忘れないようにすることについて
メモや書きとめなどを工夫しない人はいないだろう
エジソンは「メモこそ恩人だ」と言ったが
発明家の彼にとって当然の言葉である
メモや書きとめをどうするかは案外難しい
まずは自分にふさわしい道具類をいくつか用意しなくては
ならない。小さなポストイットか大きなそれか
手帳、ノートか。
相手の目の前にそれらを出してメモする人も
いるがどうだろうか。
相手は黙ってしゃべらなくなる
省察は自分の思想については小さなメモやカードに
いったん書いておいてそれをながめておいて
ノートにするほうがよい
やはり、できるだけ早くやる。
そのうちにと考えていると1週間もすぎると
すべて台無しになることも多い
メモなどが所在不明になるばかりか、そういうメモを
したことすら忘れるからである
著者 ショウペンハウエル